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1 診療の概説
アレルギー性鼻炎はハウスダスト,ダニ,スギなど花粉類を主な抗原とするI型アレルギー疾患であり,くしゃみ,水性鼻汁,鼻閉を主症状とする.遺伝的素因者が原因抗原に曝露を繰り返すうちにIgE抗体が発症レベルに達し,感作が成立する.さらに鼻粘膜において抗原に曝露され,すでに感作されている肥満細胞に吸着することにより,ヒスタミンなどのケミカルメディエーターが放出される.これらが鼻粘膜の三叉神経末端を刺激し,中枢を介した反応でくしゃみ,鼻汁が出る.鼻閉は,ヒスタミンやロイコトリエンが直接鼻粘膜の血管系に働き血管拡張,透過性の亢進により出現する.鼻内所見は鼻粘膜は腫脹し,水性鼻汁の貯留を認める.
スクリーニングには鼻汁スメアによる細胞診が簡便で,好酸球の浸潤を認める.原因抗原を明らかにするために皮膚テスト,特異的IgE抗体,鼻誘発テストがあるが,妊娠中は特異的IgE抗体検査が外来採血で判定でき施行しやすい.ルーチンにはスギ花粉,ヒノキ花粉,イネ科を代表してカモガヤ花粉,ヨモギ花粉,ブタクサ花粉などにハウスダスト,ダニ,真菌などを選び,ペットのイヌ,ネコを飼っていればそれを含める.この中でもハウスダストと花粉が特に重要である.鼻アレルギー類似症状を呈し,前述の検査がすべて陰性の場合は血管運動性鼻炎であり,鼻アレルギーと区別する.
花粉に対するアレルギー反応は,鼻粘膜以外に標的臓器が眼では眼結膜,気道では鼻,咽・喉頭,気管,気管支,さらに消化管,皮膚,精神神経系など多臓器に及ぶ.そしてそれぞれの臓器の病態に応じて特有な症状が出現し,花粉症の多彩な症状を呈することが多い.花粉症では,鼻だけに症状がある通年性のハウスダストアレルギーなどと異なり有症期間は特定の季節の数か月に限られるが,患者の苦痛は大きい.花粉症は年々患者が増加傾向にあり,好発年齢の20~30歳代では15%にのぼる.また女性に多く妊婦管理を行ううえでも重要である.
妊娠前に健常でも妊娠中に鼻閉を訴える場合が10%弱あるとされ,妊娠性鼻炎として知られている.妊娠に伴って循環血液量,心拍出量の増加,血管の拡張,毛細血管の抵抗の減少から鼻粘膜の充血・腫脹を生じやすい.妊娠前からアレルギー性鼻炎のある患者では鼻閉の悪化傾向は半数以上にみられる.
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