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はじめに
アレルギー性鼻炎はIgE依存性アレルギー疾患で,発作性反復性のくしゃみ,水性鼻漏,鼻閉を三主徴とする.この三主徴を鼻粘膜の過敏性症状としてとらえ,類似の症状を呈する好酸球増多性鼻炎と血管運動性鼻炎を加えた包括的用語として鼻過敏症という病名もある(図1).診断基準は後述するが,主題のアレルギー性鼻炎については,しばしばアレルギー素因を持ち,局所肥満細胞増多,局所好酸球増多,時には血中好酸球増多,粘膜の非特異的過敏性亢進などの特徴を持つ.好発時期から通年性アレルギー性鼻炎と季節性アレルギー性鼻炎に大別され,前者はハウスダスト(チリダニ)アレルギー,後者は花粉症で代表される.しばしばアレルギー性副鼻腔炎を合併し,鼻腔だけでなく副鼻腔のアレルギーも含める意味で鼻アレルギーという用語もある.ただし保険診療ではアレルギー性鼻炎の病名が用いられる.ちなみに花粉症という病名は保険病名にはない.筆者の関与する医療統計データではアレルギー性鼻炎は耳鼻咽喉科診療所の外来患者の第一位,時に第二位を占め,耳鼻咽喉科以外の診療科で扱われていることも少なくない.
最近の動向の1つとして,従来は小児のアレルギー性鼻炎のほとんどが通年性で,原因アレルゲンはハウスダストであったものが近年,花粉症の低年齢化で小児の花粉症を診ることも少なくない.しかもそのほとんどにハウスダストアレルギーが合併している.ペットアレルギーも増えてきた.花粉症と関連した口腔アレルギー症候群(oral allergy syndrome;OAS)も注目されている.詳細は後述するが,アレルギー検査項目の選択に際しての留意点の1つである.
花粉シーズンには,アレルギー性鼻炎の病名で扱われるアレルギー検査で特に免疫検査がこの時期に集中する.アレルギー性鼻炎の原因アレルゲンはハウスダスト(チリダニ)とスギ花粉で,これは全国的傾向である(図2)1).ただし北海道ではスギに代わってシラカンバが重要花粉となっている.そこで花粉症では地域特性があることも留意しておきたい.
以上のような現況をふまえ,本稿では既に作成されている「鼻アレルギー診療ガイドライン」2)に基づき,筆者の経験による私見3)も交えて,アレルギー性鼻炎の診断のための検査,原因アレルゲンの検査,治療のための検査,経過観察,治療効果の評価のための検査などにまとめて解説する.
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