連載 OBSTETRIC NEWS
胎盤下縁と内子宮口の距離が2cm以上は経腟分娩
武久 徹
1
1武久産婦人科医院
pp.1214-1215
発行日 2003年9月10日
Published Date 2003/9/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409100844
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Oppenheimerらは,経腟超音波で測定した胎盤下縁と内子宮口の距離(距離)が2cm以上の妊婦では,前置胎盤のために帝王切開(帝切)となった例はなく全例経腟分娩できるが,距離が2cm以内の妊婦8例中7例は前置胎盤が原因と思われる出血のために帝切となったことから,経腟超音波による距離測定は適切な分娩方式を決定するうえで有用であることを報告した(AJOG 165 : 1036, 1991).
ついでAlan Gagnon(ブリティッシュコロンビア大学)らは,妊娠後期に内子宮口から2cm以内に胎盤の下縁がある57例を対象に分娩転機を検討した.24例(42%)が経腟分娩,33例(58%)が帝王切開(適応の22%は低い胎盤付着部位または出血)となった.距離は経腟分娩群平均3.6cm,帝王切開群平均2.2cmであった.妊娠36週で1.1cmでも経腟分娩できた例があり,距離が1cm以下でも経腟分娩を考慮すべきと報告している.しかし,輸血が必要であった3例は距離が1.2cm,1.3cm,1.4cmであった.輸血は不要だったが分娩中に多量出血した3例(平均出血量2~2.5l)の距離は2~3.5cmであった.初回診断から最終診断時の距離の移動率を41例で検討すると,1週間に0.3cm改善することが示唆された.しかし,最終的に内子宮口から2cm以内の胎盤下縁は「赤旗」であると述べている.産科担当医には「内子宮口と胎盤下縁の距離」を報告し,「前置胎盤」,「辺縁前置胎盤」などの記載をせず,管理方針は担当医が決定すべきと報告した(Ob Gyn News. July 1, 2000).
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