今月の臨床 症例から学ぶ前置胎盤
症例から学ぶ
4.既往2回帝切後の全前置癒着胎盤症例に対して,子宮底部縦切開法を用いて帝王切開手術を施行した1例
細谷 直子
1
,
小川 正樹
2
,
平野 秀人
1
,
田中 俊誠
1
1秋田大学医学部生殖発達医学講座産婦人科学分野
2秋田大学医学部医療情報部
pp.1340-1343
発行日 2004年11月10日
Published Date 2004/11/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409100663
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
はじめに
帝王切開術は,児を安全に娩出させることを目的とした急速遂娩術の1つであり,近年の少子高齢化を背景にその率は上昇している.一方で既往帝王切開術は,前置胎盤や癒着胎盤のリスク因子となり得る.Millerら1)は,帝王切開既往妊婦における前置胎盤の頻度は3倍高く,さらにこのリスクは既往帝王切開術の回数が多いほど高くなると報告している.帝王切開既往妊婦の前置胎盤においては,胎盤が帝王切開瘢痕部に付着する可能性が非常に高い.同部位は脱落膜が欠如するか発育不全に陥っているために絨毛が容易に子宮筋層へ浸潤し癒着胎盤となり,帝王切開時の大出血,最悪の場合は母体死亡へとつながる危険性がある2).したがって,帝王切開術の既往のある妊婦を診察する場合には,前置胎盤の有無を確認することはいうまでもなく,前置胎盤を認めた場合には,前置癒着胎盤の可能性を念頭に置いた周産期管理が必要とされる.
今回われわれは,超音波断層法およびMRI検査を用いて前置癒着胎盤が疑われた既往2回帝切後の妊婦に対して,子宮底部縦切開法を用いて帝王切開術を行い安全に児を娩出させた後,子宮全摘出術を施行した1例を経験した.症例を呈示するとともに,症例から学んだ周産期管理のポイントについて述べたい.
Copyright © 2004, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.