今月の臨床 妊産婦と薬物治療─EBM時代に対応した必須知識
Ⅱ.妊娠中の各種疾患と薬物治療
2.妊娠合併症の治療と注意点
[感染症] 細菌性腟症
島野 敏司
1
,
高階 俊光
1
,
工藤 隆一
1
,
斉藤 学
1
,
逸見 博文
1
,
東口 篤司
1
1斗南病院産婦人科
pp.586-589
発行日 2005年4月10日
Published Date 2005/4/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409100282
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1 診療の概要
細菌性腟症という用語は,今から約20年前の1984年1月,ストックホルムにおけるBacterial Vaginosis Symposiumより使用された1).それ以前の名称は非特異性腟炎であった.非特異性腟炎は,腟炎のなかでカンジタやトリコモナスなどの原因が明らかである腟炎以外の腟炎の総称であった.しかし1980年にSpiegelら2)は,非特異性腟炎においてはLactobacillusが減少し,Gardnerella vaginalisや嫌気性菌であるBacteroides属,Peptococcus属が増加し,これらの細菌が琥珀酸,酢酸,酪酸,プロピオン酸を産生し悪臭の原因になっていることが非特異性腟炎の病態であると報告し,細菌性腟症の実態が明らかにされた.実際,細菌性腟症の患者の腟内細菌は,正常妊婦に存在する乳酸桿菌の数に比べ1,000倍以上も増殖した状態となっている(図1,2).
この細菌性腟症と流早産の関係を明確にしたのは,1986年,Gravettら3)である.それは,BVと性器クラミジア罹患妊婦においては有意に早産率が高くなるという現象で,そののち同様の報告がなされた.しかし,妊娠時BVの治療により早産が減少するという二重盲検法による検討は,2003年になりやっとUgwumaduら4)により報告されたのである.今後,妊娠時BVの治療は,腟から子宮内への上行性の細菌感染による流早産防止のために,本邦でも積極的に行われることになると期待される.
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