今月の臨床 妊産婦と薬物治療─EBM時代に対応した必須知識
Ⅱ.妊娠中の各種疾患と薬物治療
2.妊娠合併症の治療と注意点
[精神系疾患] うつ病
赤松 達也
1
1赤松レディスクリニック
pp.533-535
発行日 2005年4月10日
Published Date 2005/4/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409100261
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1 妊娠中のうつ病
妊娠・分娩および産褥早期の育児期間は,女性の人生において最も精神障害をきたしやすい時期であることはよく知られている.妊娠中のうつ病(DSM─IVによる大うつ病および軽症うつ病)には,妊娠後に発症するうつ病(妊娠うつ病)と,うつ病患者が妊娠する場合がある.
妊娠うつ病の発症率は16%で,その7割が妊娠初期の発症である.妊娠中のうつ病の危険因子は低年齢,社会的支援の脆弱性,ひとり暮らし,子供が多いなどである1).そのため分娩前のケアの不十分さから,低栄養状態,早産,低出生体重児の危険性をはらんでおり,産後うつ病,自殺とも関連が深い2, 3).うつ病患者が妊娠した場合には,抗うつ薬による治療を中断する女性は多いと推測される.しかしその半数が妊娠後期までに再発・再燃するという報告がある4).したがって症状に応じて適切な薬物療法と薬物指導が必要である.流産や死産を経験した女性では,しばしば妄想や不穏状態も含む重い抑うつ症状を経験する.この場合,少量の抗精神病薬の投与も加えた薬物療法が必要なこともある.
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