今月の臨床 症例から学ぶ多嚢胞卵巣
多嚢胞卵巣と卵巣過剰刺激症候群
2. 重症卵巣過剰刺激症候群に対する胸・腹水濾過濃縮再静注法
金崎 春彦
1
,
上田 敏子
1
,
宮崎 康二
1
1島根大学医学部産科婦人科学教室
pp.50-55
発行日 2005年1月10日
Published Date 2005/1/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409100151
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はじめに
難治性の排卵障害を有する多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)患者に対するhMG─hCG製剤による排卵誘発法は,抗エストロゲン剤療法に比べて排卵率,妊娠率ともに有意に高率であることから広く行われている.しかしながら,hMG─hCG製剤による卵巣の反応性は病態および個人によって大きく異なり,多発卵胞発育から多胎妊娠や卵巣過剰刺激症候群(OHSS)の発症頻度が高くなる難点がある.特にOHSSは薬物投与後に発症する医原性疾患であり,重症化した際には生命をも脅かしかねない症候群である.本疾患は本来健康な女性に発症するものであり,可能な限り予防策を講じ,重症化しないように注意し,万が一重症化してしまった場合には適切な治療を速やかに行う必要がある.
OHSSは排卵誘発の合併症として発症し,卵巣腫大,腹水,胸水の貯留とそれに伴う血液濃縮,低蛋白血症,循環血液量の減少を呈する症候群である.重症のOHSSは,その病態が経時的に変化するために,水分代謝を理解し,適切に対応することが重要であるが,サードスペースへの水分貯留,血管内脱水状態に対して胸,腹水濾過濃縮再静注法の有用性が多数報告されている1~3).われわれの施設においても,PCOS患者ではないものの排卵誘発薬使用に伴う重症OHSSを発症した患者に対して胸・腹水濾過濃縮再静注法を施行し,症状の改善をみた症例を経験したので,OHSS発症への経過,治療,その後の経過を含めて呈示する.
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