認定医講座
整形外科的バイオメカニクス・運動学
井上 雅裕
1
1大阪大学医学部整形外科学教室
pp.645-651
発行日 1989年5月25日
Published Date 1989/5/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1408908114
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はじめに
整形外科の分野において,最近ますます工学的な考え方や分析方法が導入されるようになってきた,これは整形外科が運動器の外科であるために,その対象とする疾患の診断や治療について考えるとき,単に観察や経験に頼るよりも,力や運動という概念を用いた記述的な方法や計測法を用いたほうがより客観的で普遍的な判断を下すことができるということが認識されるようになってきたからであろう."整形外科バイオメカニクス"という言葉も最近では一般的に用いられている.しかし,現在の医学教育カリキュラムにおいては生体工学はほとんど考慮されていないというのが現状である.したがって一般の整形外科医は"応力"とか"歪"というような工学用語には依然として慣れてはいない.一方,整形外科分野における最近のトピックスをみると,人工関節,人工靱帯,脊椎インスツルメンテイションなどのように生物学的な理解のみならず,臨床応用に際して工学的な理解を必要とされるものが少なからず存在する.また整形外科的な診断学や治療学の発展をめざして今後ますます整形外科医と工学者の共同研究が行われ,その結果が臨床に応用される場面が増加すると思われる.このような点から,工学の基礎的知識は,もはや整形外科医にとって研究面のみならず,治療面においても必須であるといっても良いであろう.
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