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緒言
外傷や骨腫瘍摘出後,炎症・変性疾患の治療後などの骨欠損に対して,従来より自家骨移植が用いられ良好な成績をおさめている.しかし,骨欠損が広範な場合,自家骨移植にも量的な限界があり,また採骨部の変形なども無視できないことがある.このような広範囲骨欠損の対策として,冷凍保存同種骨移植,キールボーンなどの処理異種骨,アルミナや骨セメントなど,種々の試みがなされている.中でも同種骨移植については,ボーンバンクの設置など,実現性を帯びてはきているものの,移植の際の免疫反応や,骨誘導性の維持など,まだまだ研究の余地が残されており,しかも,人間の生体や死体から大きな骨塊を切除するということが,我が国の社会通念上,にわかに許容されるとは言い難い.キールボーンなどの処理異種骨は,臨床でも使用されてきたが,周囲の骨形成も遅く,理想の骨代用材にはほど遠い11).アルミナは,生体親和性にすぐれているが,周囲の骨形成を促進することはなく10,17),さらにアルミナのように固いものが半永久的に体内に残存することも新たな問題を呼ぶことになろう.骨セメントにいたっては,悪性腫瘍の骨転移巣摘出などの姑息的手術後に用いられる場合がほとんどである.
さて,近年,骨ミネラルの研究により,骨ミネラルに近似した水酸アパタイトCa10(PO4)6(OH)2(以下HA)が合成されるようになり,主として口腔外科,整形外科の領域で注目を集めている.HAは,1)骨ミネラルに近似し,2)骨親和性にすぐれ,3)骨と直接結合して新生骨形成に良好な「場」を与えることが多くの研究者により報告されている。私達は,HAの細粒を,自家骨移植を補う,あるいは単独に用いる骨充塡材として,臨床応用できる可能性をみるため基礎的実験を行い,いくつかの興味ある所見を得た.さらに,骨盤部に発生した巨大な骨腫瘍に対して,HA細粒を自家骨と混合して用いた臨床経験20)を得たので報告する.
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