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はじめに:連通多孔体人工骨ネオボーンとは?
1985年にはじめての完全化学合成の生体活性セラミックス人工骨であるハイドロキシアパタイト(HA)人工骨が開発されて以来,さまざまな新規マテリアルを用いたバイオセラミックス人工骨が続々と臨床応用されてきたが,臨床的評価では大きなブレイクスルーと認識されるにはいたらなかった.そのような中,われわれは,マテリアル研究のトップサイエンティストと巡り会い,新しい医療機器開発をめざすベンチャー企業と巡り会って,材料そのものではなくマクロ構造に着目した新たな人工骨 “ネオボーン” を開発することに成功した.この人工骨は,材料は従来からのHAと同じであるが,直径150μm程度の多数の小空隙である,“気孔” が互いに隣接して存在する構造を有しているため,埋植後早期に材料表面だけでなく内部の気孔内に新生骨形成が生じ,移植部位の強度の増強が期待できる(図1)1,2).
ネオボーンは,高い気孔率と優れた気孔連通性がもたらす高い骨親和性を実現しながら,術中の操作に適した強度をあわせもつ人工骨として,それまで市場に出ていた人工骨とは異なる特徴をもつものであった.臨床的にもネオボーンの上市後,さまざまな分野の整形外科の専門医と連携し,良性骨腫瘍での骨欠損補塡3)のみならず,関節リウマチの関節周囲嚢胞や関節固定術,人工関節の弛み(図2),偽関節手術,楔開き骨切り術,骨粗鬆症関連骨折などの脆弱な骨の補強への応用など,これまで人工骨の出番が少なかった病態で,自家骨の代用または併用ができることを明らかにして,新たなコンセプトの人工骨の有用性を示すとともに,人工骨の適用範囲の拡大に取り組んできた4).その後,2000年代には本製品を追うようにして,マクロ構造に着目して開発・改良された種々の “第2世代” ともいえる人工骨が上市されることとなった.また,われわれはネオボーンが骨再生医療の足場材料として有用であることを報告してきたが4~6),われわれが着目した連通気孔構造は,骨再生に限らずさまざまな再生医療の足場材料に求められる基本的なマクロ構造として認識されることになった.
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