症例検討会 骨・軟部腫瘍23例
症例1—左大腿骨腫瘍—Giant cell tumor of boneの疑い
田中 宏和
1
,
本多 重信
1
,
平野 徹
1
,
岩崎 勝郎
1
,
鈴木 良平
1
,
津田 暢夫
2
1長崎大学整形外科
2長崎大学中検病理
pp.466-470
発行日 1981年5月25日
Published Date 1981/5/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1408906340
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患者:49歳,男子.採炭夫.
病歴:昭和54年12月18日,作業中わずかな外力で左大腿骨骨幹部を骨折した.なおその3週間前に左膝部を打撲した既往があり以後跛行が続いていたが抗内作業が可能であつた.同年12月19日当科受診時のX線像では骨折部を中心に約3×4cm大の骨透亮像がみられ境界不明瞭,骨皮質は菲薄化しており骨膜反応はみられなかつた(第1-1図a).その後仮骨は豊富に形成され約3週後にはほとんど骨折部に可動性はみられなくなつた(第1-1図b).同じ頃行つた血管造影では中等度の血管増生がみられるが悪性血管像はない(第1-1図d).また骨シンチグラムでは集積が強い(第1-1図c).血沈,血液生化学的には特に異常を認めない.骨折後1ヵ月目に広汎切除を行つた(第1-2図).骨折部には凝血塊がかなり存在していたがその周辺には弾性軟,褐色調の腫瘍塊がみられ骨との境界は不明瞭であつた.骨切除後は診断が確定するまで創外固定を行い短縮を防ぎ,1ヵ月後に骨移植と内固定を行つた.手術時,骨移植部の周辺にはいくらか仮骨形成がみられたが骨移植部には弾性軟,黄褐色の瘢痕様組織が充満しており,移植骨の一部はそれに巻込まれるようにして残存していた.これらは白色を呈しており硬く出血傾向はみられず生着していないものと考えられた(第1-3図).同部を掻爬し再び骨移植を行つて現在に至るが骨癒合は遅延している.なお肺転移などはみられない.
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