視座
略語と年号
鈴木 良平
1
1長崎大学整形外科
pp.993
発行日 1976年11月25日
Published Date 1976/11/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1408905425
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戦後アメリカ医学が大幅に導入されてから,いずれの診療科でも,病名,症状,診断法,治療法などに,術語の頭文字を並べた略語が使用されることが非常に多くなつた.御多聞にもれず,わが整形外科領域でも,この傾向は著しい.戦前から整形外科でもL. C. C.などという一般に知られた略語は使用されていたものの,今日ほど目につくことはなかつた.現在では元の言葉を知つているのかと疑いたくなることもある.英語読みにしている略語が実はドイツ語の略語であつたりして,苦笑することもたびたびである.確かに略語は便利で,これを知つている人の間で使用することは一向支障ないのだが,ある教室だけで使用しているものを,学会に持出したり,また他科への紹介状に使用したりすることはどうも戴けない.同じ略語でも科によつて意味することが全く違つている場合もあり,これが元で医療事故を惹き起こさないという保証はあるまい.他科からの紹介状でも,略語がずらりと並べられていると,忙しい診察の間に暗号を解くようで,いらいらすることも度々である.とにかく自分勝手な略語を外に持ち出すことは失礼であるばかりか,危険さえ伴う.しかし略語の便利さを考慮すれば,一概に排斥するわけにも行かないので,日整会用語委員会あたりで,少なくともわが国に共通する略語を決めてはどうかと思う.とにかく略語の乱用は慎しむべきことである.
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