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はじめに
1952年,Christopherson2)らは,四肢,ことに大腿および下腿の筋肉内に好発し,組織形態上,いくつかの大型の多角細胞polyhedral cellsが細い血管腔と線維性結合織索によつてとりかこまれ,全体として偽腺腔構造organoid patternあるいは,胞巣状構造alveolar patternを呈する一群の軟部腫瘍を集録し,これらの組織形態学的特徴,発生部位および,臨床的には他臓器転移をきたす,生物学的性状から,これを胞状軟部肉腫Alveolar Soft-Part Sarcomaと命名した.一方,これらの腫瘍はまた,胞体内にしばしばエオジン好染性の顆粒を多数有することから,古く,悪性顆粒細胞性筋芽細胞腫malignant granular cell tumor(Ravich, Stout and Ravich19),1945., Ackerman and Phelps1),1946)あるいは,悪性傍神経節腫malignant tumors of nonchromaffin paraganglioma(Smetana and Scott23),1951)とも呼ばれ,その発生母地に関して,組織形態あるいは組織化学的な検索がいろいろとなされてきたが,筋原性とするもの,神経原性—ことにparagangliomaの悪性化したものとするもの,あるいは本腫瘍が組織形態上きわめて豊富な血管を有し,その周囲に腫瘍細胞の増殖が上皮様配列を示していることから,血管外膜に位置するpericyteより発生したHaemangiopericytomaとするもの24)など定説がなく,Christophersonの報告より20年を経た現在,なお,その組織起源は明らかにされていない.
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