臨床経験
野球による棘上,棘下筋麻痺
靹田 幸徳
1
,
小久保 勝弘
1
Yukinori TOMODA
1
,
Katsuhiro KOKUBO
1
1日本医科大学整形外科学教室
pp.249-253
発行日 1972年3月25日
Published Date 1972/3/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1408904667
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はじめに
近年スポーツが盛んとなるとともに,技術の向上,手技の変遷さらに練習の強化に伴つて,これらスポーツによる外傷や障害も増加し,同時に従来と趣きを異にする障害が現われてきている.ことに肩関節を駆使するスポーツにおいても,その関節の適応域を趣えるような過度の運動が強制されることによる肩関節障害が起こつていて,これをBadgley1)はscapular syndromeと呼び肩関節部および肩甲帯部の疼痛と異和感を訴えることが特徴であると述べている.このような障害はスポーツの継続,さらにはこれら障害の治療という点から重大な問題となつている.
これら肩関節障害の1つとして利き腕側棘下筋の単独萎縮について林原2),靹田3),五味淵4)らにより報告されている.しかし,これらは症例数も少なく,その発生機序に関しても未だ解明されておらず,したがつて治療法も確立されていない.著者らは肩関節を駆使する各種スポーツ選手の肩につき調査を行ない,利き腕側棘上,棘下筋萎縮が予想以上に多くみられたので,これらにっき検討を行ない,さらに発生原因と考えられる肩甲上神経について解剖学的検索を行ない若干の知見を得たので報告する.
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