視座
大腿骨頸部内側骨折
伊藤 鉄夫
1
1京都大学医学部整形外科学教室
pp.423
発行日 1970年6月25日
Published Date 1970/6/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1408904408
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大腿骨頸部内側骨折は人類が長寿になるに従つて多発するようになるが,この骨折には未解決の問題が多い.この骨折では骨頭の血流が遮断されて早期に壊死に陥るのであるが,幸に血流の一部が残存していると,この部から周辺の壊死骨に血流が回復し壊死骨の置換が起こる.骨折の正確な整復と強固な固定が行なわれると,骨折部からも血管が侵入して壊死骨を置換する.骨頭の壊死骨置換が完成するには少なくとも2年を要するといわれている.しかも体重負荷部の置換がもつともおくれる.片脚起立時に骨頭に体重の2倍以上の荷重が加わる.したがつて,置換が行なわれていない体重負荷部にしばしばcollapseが起こる.一般にこれをlate segmental necrosisと呼んでいるが,late segmental collapseと呼ぶのが正しい.壊死は受傷後早期に起こつているのであつて2年後に起こるのではない(Barnes).
Lintonは大腿骨頸部骨折の転位について研究し,骨折線は常に一定しており,骨折後の転位の程度によつてレ線上の像が種々に変化すると主張した(J.B.J.s.,31-B:184, 1949).
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