歴史
骨折治療の近代史(4)—不錆鋼の開発
天児 民和
1,2
Tamikazu AMAKO
1,2
1九州大学
2九州労災病院
pp.131-134
発行日 1970年2月25日
Published Date 1970/2/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1408904367
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Lane,Lambotteらが骨折の非観血的療法の限界を知り,さらによき治療法はないかと考えていたとき,ちようどListerの制腐手術の効果が認められた.それなら手術的に骨折の転位を整復してその位置で骨折部を固定しようとした.それには金属の力を借りる必要がある.Laneは金属副子と螺子を,Lambotteは螺子,針金等いろいろと考按して用いた.その中にはよく治癒したものもあつたがその成績ははなはだしく不安定で,金属板の発錆による破損も多く,破損しなくとも螺子は錆のため腐触し固定力を失ない,それよりさらに悪いことには錆による肉芽形成,膿瘍,瘻孔,感染と悲劇的な結末になることが多かつた.そこで固定力強度,耐錆性ある骨接合材料の探求が始まつたのである.米国では金属の代用として象牙が用いられ,日本では神中先生が牛骨を用いた.牛骨は副子,螺子として用いたが度々苛性ソーダで煮沸しているので蛋白は除去せられたため異種骨移植による抗原抗体反応はなかつたが,固定上強度が弱く折損することが多く,仮骨形成,骨癒合も遷延する例もあり,しだいにわれわれの視界より消滅してしまつた.
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