論述
骨巨細胞腫の鑑別診断
前山 巌
1
1国立がんセンター整形外科
pp.657-668
発行日 1966年10月25日
Published Date 1966/10/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1408903811
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序
CooperおよびTravers(1818)によつて骨の肉腫の一型としてはじめて紹介されたこの腫瘍はその組織像に多数の多核巨細胞が存在することから,同様の所見を示す数々の類似疾患と混同一括されてきたきらいがあるが,Bloodgood(1919)1)はこの腫瘍の性格を強調して良性巨細胞腫なる呼称の下にその治療法に警告を与えるとともに,その後Jaffe,LichtensteinおよびPortis(1940)2)によつてこれらの類似疾患より区別して真の巨細胞腫なるものの概念が確立されるに至つた.同時に巨細胞腫が必ずしも良性のものばかりではなく,悪性のものや中間型のものもあり,経過とともに悪性化すること等にも注目され,その診断と共にその治療法についても数々の問題点が重視されるに至つた.
JaffeおよびLichtensteinによつてその組織像について悪性度が論じられてきたが,我国においても三木3,4),鳥山5)および藤本6)等の諸氏によつてエックス線学的にその予後との関連が論じられてきた.然し,実際に個々の症例に遭遇してその腫瘍が果して治療にどのように反応し,叉絶対に遠隔転移をきたさないものかどうか等の点については全く予測を許さず,Jaffeもこの腫瘍をtreacherous lesionsと呼び,Coleyらもunpredictableな腫瘍として嘆いている(第1,2図).
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