視座
“骨誘導因子(BMP)”臨床応用への期待
中村 孝志
1
1京都大学医学部整形外科
pp.787
発行日 1995年7月25日
Published Date 1995/7/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1408901669
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遺伝子組み替え技術により新しく作られた種々なホルモンやサイトカインが医療の場で使用され始めています.整形外科領域でも自己血輸血の際のエリスロポエチンや化学療法での顆粒球減少に対してのG-CSF等はしばしば用いられており,また肝炎の治療でインターフェロンを受けた経験を持たれる先生方もおられることと思います.そのような中で整形外科で最も期待されているものに骨誘導因子(BMP)があります.
BMPはUristの1970年のScience誌の論文に始まり,その精製にはわが国の整形外科の多数の先生方が貢献し,とりわけ大阪大学の高岡氏らのグァジニンを用いた可溶化の仕事はBMP精製の重要な発見となっています.遺伝子のクローニングはGI社のWozneyらによってなされ,1988年にScience誌に発表されました.それ以来6年余りが経過し,初期生発における重要な働きや成熟した骨での働きが明らかになり,リセプターもクローニングされ基礎的な面で大きな進展を示しています.しかし,整形外科医が期待している臨床の場での治療への応用は残念ながら未だできていません.前に引用したG-CSFはわが国でクローニングされ臨床薬として開発されたものですが,クローニングが発表されてから1年余りで臨床第一相試験が始められています.G-CSFが1980年代の開発であり,90年代の分子生物学の進展を考えると,BMPの臨床応用にかなり手間取っている印象を持ちます.
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