Japanese
English
特集 椎間板―基礎と臨床(第22回日本脊椎外科学会より)
頸髄後方除圧後の上肢麻痺―その原因と予防法
Palsy of the Arm after the Posterior Decompression of the Cervical Spinal Cord: Its Mechanisms and Methods of Prevention
都築 暢之
1
,
阿部 良二
1
,
斎木 都夫
1
,
李中 実
1
Nobuyuki Tsuzuki
1
1埼玉医大総合医療センター整形外科
1Department of Orthopaedic Surgery, Saitama Medical Center, Saitama Medical School
キーワード:
頸髄症
,
cervical myelopathy
,
後方除圧
,
posterior decompression
,
繋留効果
,
tethering effect
,
術後神経根障害
,
postoperative radiculopathy
,
硬膜切開術
,
durotomy
Keyword:
頸髄症
,
cervical myelopathy
,
後方除圧
,
posterior decompression
,
繋留効果
,
tethering effect
,
術後神経根障害
,
postoperative radiculopathy
,
硬膜切開術
,
durotomy
pp.497-506
発行日 1994年4月25日
Published Date 1994/4/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1408901355
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抄録:頸髄後方除圧時に脊髄~神経根に対し発生するtethering effectは硬膜管内・外で分けて考察する必要がある.頸椎・頸髄標本を用いての形態学的研究では,①椎弓を切除し硬膜を後方に拡大すると硬膜管外神経根部分が脊柱管方向に伸展されると同時に根嚢部(硬膜管―神経根結合部)が後内方に移動し,硬膜管内神経根糸に弛緩効果を与えること,②根嚢部の後内方移動を伴った硬膜管拡大では,その内部で頸髄を最大に後方移動させても前根糸は緊張しないことが観察された,後者の現象は,前根糸固有の長さと根嚢部後内方移動による弛緩効果が脊髄後方移動による伸展効果を吸収するためと考えられた.臨床画像でも,頸髄後方除圧後に根嚢部後内方移動が生じることが認められた.各頸神経根における最長前根糸長(最頭側前根糸長)と最短前根糸長(最尾側前根糸長)との比はほぼ一定し.臨床例では脊髄造影像から最頭側前根糸長を求めることにより,最尾側前根糸長を推測することが可能である.硬膜管外神経根部分が伸展された場合,同神経根部分に滑動性障害があれば,硬膜牽引性神経根障害が発生する可能性がある.また運動優位の麻痺の原因としては,椎間孔内の前根はその解剖学的位置から後根よりも高度の伸展作用を受け易いためと考えられた.
頸髄後方除圧の臨床例では,根嚢部移動障害や短前根糸が存在した場合,硬膜管内前糸伸展性障害が発生し,硬膜管外神経根の滑動性障害が存在すれば硬膜牽引性神経根障害が発生する可能性がある.
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