視座
国際コミュニケーションと私達の課題
辻 陽雄
1
1富山医科薬科大学整形外科
pp.563-564
発行日 1991年5月25日
Published Date 1991/5/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1408900342
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東西ドイツの統一,あの生々しい湾岸戦争と戦後の痛ましさ,ソ連の問題……,世界が一瞬にして生の情報をキャッチし,国際世論をかき立てる.恐るべき力が電信画像にはある.凡ゆる情報は世情や文化や科学技術の圧力の高い所から低い方へ流れる.言語もまた国際社会の中で,圧力の高い国のもので占められる傾向はますます強まってゆく.
経済大国だ,科学技術は一流だと自負し,各国からもそのようにみられている日本は,経済的援助はともかく発展途上国へは情報や技術は輸出できても,先進国へは仲々思うようにいかない.むしろ未だに輸入に依存しているようにも思える.整形外科領域でも例外でない.科学の領域では医学も含めて,古来,欧米のアイデアや技術をひたすら輸入し,これを加工してきた歴史的事実は誰も否定できない.国際社会の一員として日本をみるとき,私達が開発した技術や価値ある研究成果が,もっと積極的に海外に発信されて世界の人たちに役立てる努力をしないと,儲け主義の経済大国のイメージだけが残ってしまう.そこには言語のバリアーは極めて大きいが,わが国の文化行政や各学会の姿勢にも原因があるように思える.世界的に共通する言語で書かれた論文や出版物はある意味では国家の文化的水準の指標であり,学界のレベルの目安となるにもかかわらず,先進国日本では国際レベルでの論文や出版物の正確な数さえも把握されていないのである.
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