扉
私達の世代
加藤 天美
1
Amami KATO
1
1近畿大学脳神経外科
pp.597-598
発行日 2010年7月10日
Published Date 2010/7/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1436101206
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私が脳神経外科を志した30年前は頭部外傷や脳出血の患者が多く,病棟はさながら野戦病院のようだった.徹夜の手術,患者の急変は日常茶飯事で,術後の再出血,脳ヘルニア,遷延性意識障害といった転帰が本当に身近な病態だった.手術適応,手術手技,患者管理すべてにおいて体系だったエビデンスもなく,まさに道なきジャングルを試行錯誤で切り拓くという感があった.翻って今日,手術が原因で大きな神経脱落症状が生じたり,生命に関わることは例外的であり,ある意味,教科書的な疾患は教科書的に治療すれば,まともな結果が得られる.「よき時代」となったものだ.
30年前と言えば,やっと顕微鏡下手術が導入された頃である.このような状況から世界レベルにいち早く追いつき,日本独自の展開をも強力に先導してきた日本脳神経外科学会という組織の役割には瞠目すべきものがある.過去の年次総会の企画を振り返ると,脳出血や頭部外傷から,破裂脳動脈瘤,頭蓋底外科,血管内外科などへの変遷にその足跡をみることができる.
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