書評
整形外科レジデントマニュアル 第2版
山下 敏彦
1
1札幌医大・整形外科学
pp.983
発行日 2020年8月25日
Published Date 2020/8/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1408201780
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本書は,わが国における最高レベルの整形外科診療・研究を展開している東大整形外科および関連施設のスタッフの執筆による,整形外科初期・後期研修医(レジデント)向けの手引書である.2014年の初版から6年ぶりに改訂され,近年の整形外科医療の進歩に即応したup-to-dateな内容となっている.
一方,整形外科医療には,骨折・脱臼の処置,関節内注射,手術基本手技,周術期管理,インフォームドコンセントなど,昔から変わらない基本事項がある.レジデントにとっては,それらこそ最初に身に付けるべきものであり,整形外科医としての基盤となるものである.本書の前半の「総論」ではこれらの基本事項が丁寧に解説されている.さらに,他書にはみられない「治療法選択にあたってのガイドライン,文献の使いかた・調べかた」「カンファランスでのプレゼンテーション」「学会発表(症例報告)の意義とその方法」などもレジデントにとってはうれしい項目であろう.極めつけは,本改訂版から新たに加わった「整形外科の基本必須事項」である.ここには東大整形外科において長年にわたり語り継がれてきた心構え,べからず集が列挙されている.「治療方針に迷ったら,自分の大切な人にならどうするかを考える」「医師は『大丈夫だろう』と思っても,看護師は『何かある』と患者の変化をとらえる」「3椎体以上にまたがる椎体炎は結核性を疑う」などの箴言や教訓が散りばめられている.それは,あたかも何十年にもわたって注ぎ足されてきた老舗のタレやスープのように味わい深く,また貴重なものである.
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