整形外科/知ってるつもり
放射線被ばくによるDNA損傷と染色体異常
坂根 寛晃
1
,
田代 聡
2
Hiroaki SAKANE
1
,
Satoshi TASHIRO
2
1広島大学大学院医歯薬保健学研究科放射線診断学
2広島大学原爆放射線医科学研究所細胞修復制御研究分野
pp.392-395
発行日 2019年4月25日
Published Date 2019/4/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1408201336
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はじめに
医療分野における放射線の利用は国民の健康に多大な恩恵をもたらし,整形外科領域においても日常診療に必要不可欠なものとなっている.一方で,放射線被ばくには健康被害を伴う可能性があり,中でも放射線被ばくによる発がんリスクは,患者のみならず透視下検査などを行う医療従事者にとっても重大な懸案事項である.わが国ではCT装置の台数・検査数ともに世界最高水準であり,診断用X線によってがんが3.2%増加する可能性があると報告され,社会的に大きな問題となった1).また,福島第一原発事故後は低線量被ばくの人体影響にも社会的に注目が集まっており,放射線被ばくに対する関心はこれまでにも増して高くなっている.
電離放射線による発がんは,放射線照射を受けた細胞核内のDNAに生じる損傷や染色体異常などの遺伝情報の変化に起因すると考えられている.本稿では,放射線被ばくによって引き起こされるがんの発症機構についての理解を深めるため,DNA損傷と修復,染色体異常とその解析手法について,最近の知見を交えながら概説する.
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