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書評 外科系医師のための手術に役立つ臨床研究
金尾 祐之
1
1がん研有明病院婦人科
pp.1033
発行日 2018年11月25日
Published Date 2018/11/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1408201224
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手術にかかわる外科系若手医師にとっての最大の関心事は,毎日訪れる手術を安全に乗り越え,執刀件数を増やすことではないかと思います.私自身ももちろん同様の思いで20年近く手術技量を磨くべく邁進してきたつもりです.ところが最近になって「自分の行っている手術が本当に患者さんの恩恵につながっているのだろうか?」とふと考えることがあります.このような“壁”にぶつかる外科医は少なくなく,その場合,カルテ記載を調べ自分の行ってきた手術成績を検討する,いわゆる“後ろ向き研究”を行い,満足(安堵)しているのではないでしょうか.私を含め手術技量の向上に注力し,臨床研究について系統的に学ぶ機会がなかった外科系医師にとっては,それしか方法がないといっても過言ではないと思います.
本書『外科系医師のための手術に役立つ臨床研究』は,臨床研究とは何か,Research Question(RQ)の整理の仕方,研究デザインの構築などといった臨床研究の基本的な考え方から,バイアス,交絡因子のコントロールの方法,またわれわれが絶対的な指標と信じているp値,多変量解析に潜むわななどについて非常にわかりやすく,系統的に解説されています.特に本書第4章に記載されている論文作成の方法は秀逸で,初めて原著論文を書く若手医師のみならず,いままで何本も論文作成を行ってきた医師にとっても目からうろこの内容であり,臨床研究に興味がない方にとっても必見の価値があると確信します.また最後には昨今話題になることが多い研究不正についても言及されており,著者である本多通孝先生の臨床試験に対する熱い思いを感じられる内容です.
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