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近年わが国でも関節リウマチ(RA)をはじめとしたリウマチ性疾患の診断・治療における超音波検査の有用性が広く認識されるようになった.各地で開催される講習会は,新しい技術を診療・研究に取り入れようと参加する多くの医師・技師によっていずれも活気に満ちている.本書はヨーロッパリウマチ学会(EULAR)の超音波講習会の内容に基づく“Essential Applications of Musculoskeletal Ultrasound in Rheumatology”の日本語版であり,このタイミングでup-to-dateな世界標準の超音波テキストを翻訳・出版していただいたことに心から感謝する.
前半は超音波検査の原理,ピットフォールにはじまり,正常解剖およびリウマチ学に必要な滑膜炎・骨びらん・腱・付着部炎・軟骨・末梢神経・筋を病理と照らし合わせながら解説がなされている.中盤ではリウマチ性疾患の超音波検査の各論が述べられており,RA,変形性関節症から結晶関連関節炎や唾液腺の超音波,肩関節の超音波,小児の付着部炎など,中~上級レベルの超音波の実践まで幅広く学習することが可能である.本書は単にリウマチ学における超音波の実習書にとどまらず,外傷,スポーツ医学,変性疾患など運動器全般を扱う一般整形外科医にとっても魅力的なテキストともなっている.さらに後半では超音波ガイド下の注射や生検,わが国ではまだ馴染みの浅い造影超音波検査の原理と臨床応用といった応用技術についても記載されている.何と言っても本書の特徴は近年の超音波機器の発展をみせつける圧倒的に美しい画像と理解しやすいシェーマにあり,各章に豊富な引用文献が記載されていることも,自己学習においてさらに理解を深めるために非常に有用である.巻末には,世界各地における超音波教育・トレーニングの実際が報告され,今後の進歩として三次元超音波についても触れられている.
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