視座
整形外科領域における薬物療法の進歩
齋藤 知行
1
1横浜市立大学医学部整形外科
pp.243-244
発行日 2003年3月1日
Published Date 2003/3/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1408100649
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骨関節疾患に対する治療の世界的動向をみると,最近の薬物療法の進歩は目覚しいものがある.整形外科治療では,理学療法や装具療法が保存的療法の基盤であり,手術的治療がその中心をなしている.これまでの整形外科疾患における薬物療法は,疾患の根幹に関わる治療ではなく,主として消炎鎮痛剤による対症療法であった.しかし,全身性疾患を基盤とする骨関節障害に対する薬物療法は大きく変わりつつある.なかでも,骨粗鬆症と関節リウマチにおける薬物療法が最も良い例である.
骨粗鬆症が単なる老化現象から骨代謝疾患として認識されたのは,わずか10年前の1994年である.患者数が多いことから大規模な疫学調査が行われ,治療薬としてHRP(hormone replacement therapy),カルシウム製剤,カルシトニン製剤,活性型ビタミンDが開発され,臨床の現場で広く用いられてきた.しかし,これまでの骨吸収抑制剤による治療は,骨量の維持が限界であり効果の判定が困難であった.近年,骨粗鬆症は骨量の減少と骨微小構造の異常をきたし,骨折の危険性が高まった全身性疾患と定義され,診断基準は骨折の予見性に重点が置かれたものに改定された.積極的に高齢者の骨折発生を予防し,QOLの維持および向上を治療目的としている.その治療薬として第三世代のビスフォスフォネート製剤が登場した.海外での大規模治験結果では,骨量を明らかに増加させ骨折予防効果があることが証明され,整形外科以外にも内科,産婦人科などで骨粗鬆症の治療への関心が高まりつつある.
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