視座
運動器の10年(The Bone & Joint Decade)
杉岡 洋一
1
Yoichi SUGIOKA
1
1九州労災病院
pp.3-5
発行日 2005年1月1日
Published Date 2005/1/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1408100017
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運動器に対する関心やその重要性の認識は,一般は無論,医学界においても極めて低いのが現状である.一昨年4月に第26回日本医学会総会を福岡で開催したが,学術プログラムの生命維持臓器偏重からの脱皮に腐心し,また,運動器への関心を喚起すべく,山室隆夫京都大学名誉教授にレビューレクチャー「人間の尊厳と運動器」をお願いした.
脳を思考・命令系と考えれば,運動器はその表現系であり,生活機能において両者は不可分の関係にあって,その一方の機能障害は重大な結果を招き,人間の庇護下にない動物にあっては死に直結する.この両者は車の両輪の関係にあって,その軽重に差はない.また,運動器は身体活動を司るうえで,意志によって制御可能な唯一の器官であり,その点,消化器その他の臓器に比べ進化したものと考えられる.
脳と運動器は互いに刺戟し合って進化を遂げ,現在の高等な人類を形成したといってもよく,その機能進化は学術・芸術・科学技術を生み,現代文明を築いた,日本整形外科学会員の努力や,会員主導の「骨と関節の日」キャンペーンなどにより,整形外科の診療内容も社会に正しく理解されてきたが,一部の会員から「運動器科」あるいは「運動器外科」などへの診療科名変更の提案もなされている。しかし,運動器なる言葉も一般には運動に用いる器具としか理解されないなど,その周知にはかなりの時間を要するので,現時点ではむしろ,整形外科のほうが一般に正しく理解されていると考えたほうがよい。
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