南極物語
厳寒期の凍傷
大野 義一朗
1
Giichiro OHNO
1
1東葛病院外科
pp.1093
発行日 2001年8月20日
Published Date 2001/8/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407904549
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極夜が明けた7,8月,寒さは一段と厳しくなった.快晴時には放射冷却が進み,日中でも−30℃を切った.8月2日漁協係の釣行があり,1m厚の氷に開けた穴からショウワキスが釣れた.この魚は−2℃の海中でも血液が凍らない特殊な血漿蛋白質を持っているが,釣り上げた途端に凍結した.基地に持ち帰り,水に入れるとまた泳ぎ出し,みんなをびっくりさせた.
厳寒の中,大陸調査の準備が始まった.昭和基地はオングル島にあり,大陸までは海を渡らなければならない.磁石で方位を切り,氷の厚さを測り,氷の割れ目を避け,巨大な氷山を迂回し,距離を測定して旗を立てていくルート工作.スノーモービルで走るこの作業は確実に顔面の凍傷を作った.大陸へのルートが完成すると,そこにデポしてある内陸用大型雪上車の整備だ.強風のなかで冷え切った車体に触れる作業はすぐに指先が痛くなり,それを我慢すると感覚が消え,凍傷になった.
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