特集 薬物療法マニュアル
Ⅵ.感染症の薬物療法
3.臓器・系統別感染症
尿路感染症
小林 晋也
1
,
井川 靖彦
1
,
加藤 晴朗
1
,
西沢 理
1
Shinya KOBAYASHI
1
1信州大学医学部泌尿器科
pp.393-394
発行日 1999年10月30日
Published Date 1999/10/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407903895
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基本的な事項
尿路感染症の診断と治療は他疾患の診断と治療と同様に,問診の聴取,身体所見を取ることから始まる.診断・治療を進める上で念頭に置かなければならない重要な点は,尿路に基礎疾患を有する複雑性感染と,有しない単純性感染との鑑別診断である.問診で同様な症状が過去に繰り返されていないか,中枢神経疾患や骨盤内手術の既往がないか,排尿障害をきたす薬剤の内服をしていないか,血尿の有無や普段の排尿状態に異常がないかを確認することは鑑別の手助けとなる.尿路基礎疾患としては尿流停滞,尿路結石,尿路腫瘍,膀胱尿管逆流,尿路異物,尿路留置カテーテルなどである.
尿路感染症の症状としては頻尿,排尿痛,残尿感,尿混濁,悪寒,発熱,腎部自発痛および圧痛,下腹部痛などがあり,上記の症状を示す症例に対してはまず尿検査を行う.尿沈渣所見では尿中白血球5/hpf以上を膿尿とし,尿培養所見では尿中菌数104CFU/ml以上を尿路感染の起炎菌と考えて良いが,適切な採尿がされていることが大切である.自然排尿は容易な方法であるが,男性では包皮・尿道の常在菌が混入することことがあり,女性では外陰部や腟の分泌物・上皮・細菌が混入する可能性があるため,中間尿法で外陰部の清拭後に包皮を翻転あるいは陰唇を広げ中間尿を採取させる.膀胱尿では,一側性の上部尿路完全閉塞による感染性水腎症や膿腎症では感染が証明されないこともある.
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