私の工夫—手術・処置・手順・19
死体腎移植における静脈吻合
田中 信一郎
1
Shinichiro TANAKA
1
1国立岡山病院外科
pp.328
発行日 1996年3月20日
Published Date 1996/3/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407902239
- 有料閲覧
- 文献概要
腎移植手術においては,腎移植片は患者の腸骨窩に収納されるのが通常である.その際,腎静脈および吻合部の狭窄・屈曲や過度の緊張の防止が血流障害を防ぐために重要である.とくに,右腎静脈は左腎静脈に比較して解剖学的に短茎なため上記の合併症を引き起こしやすい.本稿では右腎移植における腎静脈吻合の工夫について紹介する.
腎静脈の術後障害を予防するには,まず移植片の腎静脈を可能な限り長く切除する必要がある.われわれは腎臓摘出に際して両側の腎臓をen blocに摘出する手術方法を選択している.これにより,腎臓の潅流を行いながら腎静脈を下大静脈根部より切断することが可能となり,複数腎静脈の場合でも不注意により切断する危険もなくなる.さらに,腎摘出後に提供者の総腸骨静脈から外腸骨静脈までを切除し,これを用いて右腎静脈の延長術を行う.切除された総腸骨静脈枝の有無・結紮の確認がされて,手術テーブルの上で腎臓の潅流後に腎静脈に縫合される.吻合は端々吻合により行っているが,両側の2点支持を行い連続縫合により血管壁が外反するように注意する.また,縫合に際しては6-0,または5-0のゴアテックス糸を用いて,吻合部狭窄を避けるために緩く縫合を進め,最終結紮では約5ミリ程度のGrowth Fac-torを置くようにしている.
Copyright © 1996, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.