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最近,外科の世界にもオンライン教育が導入されつつあるが,コロナ禍がやってくる遥か以前から,医学生・研修医向けにWeb上で勉強会を開催していた先駆者がいた.本書の翻訳を企画した今村清隆先生である.それもただの勉強会ではない.米国のテキストや専門医試験問題集を利用して全国のやる気ある医学生がWeb参加しているというではないか.「自分が医学生のときに,そんな勉強会があったら……」とほぞをかむ先見性と企画力である.その今村先生がオンライン勉強会で使用した米国の有名なテキスト『Surgery:A Case Based Clinical Review』(第2版,Springer)の訳書が,このたびついに発刊された.
日本にいて同じ病院や医局で長く仕事をしていると,知らず知らずのうちにローカルルールにとらわれてしまい,ともすれば特定の疾患を自分の型に当てはめて治療する作業に満足しがちである.しかし疾患の本質的な理解が浅いと,他の文化圏の病院に異動したときに大いに苦労することとなる.昔から,外科診療では「外科医が絶対に外してはいけない疾患」があり,そうした外科医の幹となる症例をしっかりと伝えることこそが,国内だけでなく国際的に活躍する外科医を教育する第一歩になろう.本書の原書は,もともと米国の外科教育を目的に執筆されたものであるが,わが国の医学生,初期研修医,専攻医にとっても必読の内容である.読者それぞれの段階でこの30症例から学び取れることは違ってくると思うが,早めに本書を手にして熟読していただければ,将来のキャリアで必ず役立つ知識が得られることだろう.まずは今村先生の愛情がこもった本書のページをめくってみていただきたい.情報量の多さに圧倒されることなかれ,世界で戦うにはこれくらいがちょうどよいのだ!
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