増刊号 消化器・一般外科医のための—救急・集中治療のすべて
Ⅲ章 消化器救急疾患
総論
消化器癌関連のoncologic emergencyとその対処法
鈴木 健
1
,
浜本 康夫
1
Takeshi SUZUKI
1
1慶應義塾大学医学部消化器内科
pp.209-214
発行日 2016年10月22日
Published Date 2016/10/22
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407211376
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Oncologic emergencyとは,悪性腫瘍もしくは治療を含めた悪性腫瘍に付随した病態により,救命のために可及的速やかな対処を要する病態である.通常の救急医療と比べると,基礎疾患である悪性腫瘍の病態,予後,治療により方針が大きく左右されることや特有の考え方があるため,豊富な知識と経験が必要である.単なる救命を目標とするばかりではなく,治療介入の判断に基礎疾患の予後が大きく関与する.そのため,予後を客観的に評価し治療介入によるリスク・ベネフィットを速やかに検討する必要もある.また病勢悪化ばかりではなく,癌治療(手術・放射線治療や薬物療法)自体による有害事象が病態を複雑にすることがあり,配慮が必要である.
一般的な注意事項としては,①担癌患者の救急では易感染性,血栓傾向,出血傾向や高Ca血症(malignant associated hypercalcemia:MAH)および腫瘍崩壊症候群(tumor lysis syndrome:TLS)などの異常をきたす場合があるので,凝固異常,各種電解質(特にCa,アルブミンを忘れないこと)および血糖,尿酸などの結果も確認する.②病態の鑑別には,画像診断が重要であるため,必要に応じて速やかに造影CTを躊躇なく実施できる体制が望ましい.③逆に画像診断で見逃しがちな病態も多くあるため,問診,病歴や理学所見などの情報を的確に収集することも重要である.
以下に代表的なoncologic emergencyについて,各論を述べる.
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