特集 〔Q & A〕術中トラブル対処法—私はこうしている
胸腹部重度外傷
外傷性脾損傷に遭遇した
葛西 猛
1
,
小林 国男
1
1帝京大学救命救急センター
pp.877
発行日 1984年6月20日
Published Date 1984/6/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407208733
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脾温存手術(脾縫合および脾部分切除)は現在の外傷学のトピックの一つである.本邦においては脾摘後の感染症の発生率に関する臨床的データは少ないが,欧米では脾摘後感染症はすでに確立した概念としての位置づけがなされている.従つて,外傷後あるいは,術中脾損傷に遭遇した場合,出来る限り脾を温存するための努力がなされなければならない.
(1)脾縫合splenorrhaphy;脾結腸間膜および脾胃間膜を結紮切離し,脾外方の後腹膜への固定を切離して脾を受動したのちに損傷程度を精査する.被膜下裂傷に対しては,Geifoam,Oxycel,Tisseelなどの止血製剤を局所にあてその上をガーゼで圧迫止血する.これで止血し得ない時はnontraumatic needle付き3-0デキソンあるいはバイクリルなどで結節縫合あるいはhorizontal mattless縫合を行う.脾実質がもろい時は,テフロンフェルトないしはプレジェットを使用して補強する(図a).釘穴からのoozingは用手圧迫で容易に止血し得る.脾裂傷裂隙が大きい時は裂隙腔内に大網を充填しその上を連続縫合で縫合止血する(図b).
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