特集 〔Q & A〕術中トラブル対処法—私はこうしている
肺・縦隔手術
肺が脆く,縫合糸を掛ければ掛けるほど損傷が増えて気漏がコントロールできない
長田 博昭
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1聖マリアンナ医科大学第3外科
pp.856-857
発行日 1984年6月20日
Published Date 1984/6/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407208718
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特発性自然気胸,続発性自然気胸の一部,巨大ブラ等の嚢胞性疾患で肺部分切除を行う時や,気腫性肺の縫合を要する時等,脆弱な肺組織の縫合は困難を伴う.特にanthracosisや胸膜線維化を伴う部分を扱うことが多く,針で裂創を作つてしまうだけでなく,何とか縫合できたつもりでも加圧時に糸によるcuttingを生じ気漏に悩まされることが少なくない.このような症例では追加縫合を掛けても組織損傷を増すだけのことが多い.
この手の肺を相手にする時,私は補強材を用いて糸の張力を受けるようにしている.まず切除すべき病変(嚢胞等)の基部で病変の及んでいない部分に血管用鉗子(長い弱彎のものが良い)をかける.この鉗子の中枢側に鉗子に沿つてbasting sutureをおくのだが,糸は主に3-0プロリンを,補強材としてはテフロンフェルトを用いている.以前はフェルトを3×5mm位のプレジェットとして水平マットレス縫合の糸をこれに通し結んでいたが今はフェルトを4mm幅位の細長い帯状に切つたものを切除線の両側に当て,肺組織をサンドイッチ状に挾み,水平連続マットレス縫合で糸をしごきながら縫い上げている(図).鉗子末梢側の病変部分を鉗子に沿つて切除するが,この時幅2mm位鉗子線より末梢側で切るようにする.
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