特集 〔Q & A〕術中トラブル対処法—私はこうしている
胆・膵手術
ダイレーターで膵内胆管を損傷した
松代 隆
1
,
長嶋 英幸
1
1東北労災病院外科
pp.811
発行日 1984年6月20日
Published Date 1984/6/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407208693
- 有料閲覧
- 文献概要
このような偶発損傷をさけるために,総胆管切開に先立つて,十二指腸後部を膵頭部を含めて後腹膜腔より広く剰離しておくことが肝要である.ダイレーター挿入に際しては可動化した十二指腸後部に左示指および中指を挿入し,総胆管末端部を母指との間にはさむようにしてゆつくり挿入する.この操作を愛護的に行えば,通常は膵内胆管の損傷はさけ得ると考えられる.
膵内胆管の損傷の場合は胆管の損傷部位を縫合すべきである.何故ならば,このような場合には胆汁と膵液が同時に後腹膜腔に流出するので,ドレナージが完全に行われない時は重篤な急性膵炎様症状が発生することが予想される.このような症例では胆管の拡張を伴つているので胆管の縫合はそれほど困難ではないと考えられる.その手技は最近はほとんど用いられないが,膵後部総胆管切開術(Retropancreatic choledochotomy)に準じて行えばよい.すなわち,すでに述べたように十二指腸後部および膵頭部を十分に後腹膜腔より剥離する.ついで総胆管切開によりできるだけ太いネラトン管を十二指腸乳頭付近まで挿入した後,膵頭部をもち上げその後面を露出させ損傷部位を確認する(図).損傷部膵を胆管より鈍的に剥離し,胆管損傷部に達する.この際血管はそのつど結紮切離し,膵よりの出血は完全に止血する.膵表面から胆管までの距離はほとんどない.
Copyright © 1984, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.