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特集 血管カテーテルの治療への応用
泌尿器悪性腫瘍に対する化学塞栓療法
Chemoembolization for genitourinary cancer
加藤 哲郎
1
,
根本 良介
1
Tetsuro KATO
1
,
Ryosuke NEMOTO
1
1秋田大学医学部泌尿器科
pp.379-386
発行日 1980年3月20日
Published Date 1980/3/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407207400
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はじめに
癌病巣の支配動脈に挿入した血管カテーテルから患者自己組織や異物を注入する腫瘍動脈塞栓法が,各種悪性腫瘍に対するadjuvant therapyとして広く利用されている1,2).当初本法は癌病巣からの出血防止や手術時の出血対策を主な目的としていたが3),最近では腫瘍組織の梗塞壊死を目的とした悪性腫瘍に対する積極的な治療法として位置づけられようとしている.しかし,現在一般に用いられているようなgelfoamやoxycelによつて物理的に腫瘍支配動脈の血行を遮断するだけでは,十分な抗腫瘍効果が得られるかどうか疑問が残るところである.悪性腫瘍に対する腫瘍動脈塞栓法をより満足のいくものにするためには,他の局所治療法を併用して抗腫瘍効果を増強する必要がある.
一方,高濃度の抗癌剤を長時間にわたつて癌病巣に選択的に接触させ,抗癌剤の腫瘍組織内濃度を高めるとともに,循環血中濃度を出来るだけ抑えて全身性副作用を妨ぐことは癌化学療法の最終目的といえる.一般的におこなわれている静脈内投与や経口投与では,癌病巣の抗癌剤濃度を高めるためには全身循環血中濃度を増す必要があり,結局正常組織に対する毒性が生じて重篤な副作用を招くことになる.これに対処するため癌病巣の支配動脈を用いて高濃度の抗癌剤を選択的に動脈内に注入する方法がとられるようになつたが,単に動脈内注入するだけでは投与薬剤の大部分が癌病巣を経由して静脈から全身循環へ流出することになり,静脈内投与とほとんど同じ結果となる.ここで既存の抗癌剤の剤形を工夫することにより,人工的に選択性と持効性を与え腫瘍組織内に長時間停滞させることが出来れば強力な化学療法が可能となる.
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