講座 手術の実際
ダグラス窩膿瘍切開法
小平 正
1
,
隅田 幸男
1
1東邦大学
pp.1522-1525
発行日 1964年11月20日
Published Date 1964/11/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407203469
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ダグラス窩膿瘍の発生原因 骨盤腔の最低部は男性では直腸膀胱窩,女性では直腸子宮窩であり,通常これをダグラス窩(Douglas'pouch, Douglas Raum)という.腹腔内の滲出液はこの部に最も潴溜しやすく,また,この部の腹膜面からの吸収能が他の部に比して劣るので,急性化膿性腹膜炎や子宮付属器炎等に際して,ダグラス窩膿瘍(Douglas'abscess,Douglasscher Abszess)を生じやすい.虫垂炎手術後,骨盤腔内臓器手術後等の遺残膿瘍として術後間もなく,また数週後に認められることも少なくない.膿瘍の底部は直腸前壁,後腟円蓋部,子宮および付属器,あるいは膀胱壁等の腹膜であることは解剖学的に容易に判ることであるが,膿瘍の上壁はS状結腸,小腸,盲腸等の癒着蹄系や大網等で構成されていることが多い.
症状 腹部の症状は軽いことが少なくない.ときには欠如する.発熱,白血球増多等の全身症状が著るしくないこともある.鼓腸・排便障害等があり,下痢,テネスムスをともなう粘液便,血粘液便,排尿障害をしばしば認める.直腸内診により,肛門括約筋の緊張低下,ダグラス窩に相当する直腸前壁の抵抗,圧痛,さらには,その部の膨隆,波動,直腸上部の内腔狭窄を触れる.内視鏡により,この部の粘膜の浮腫,充血を認める.女性においては,しばしば後腟円蓋部に同様の所見を認めることが多い.
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