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関節結核が極めて治癒し難く,長期にわたつて生活力をむしばみ,その上再燃をくりかえす機会が多い事は種々なる理由によると考えられる. その中でもわれわれの反省を要する事の一つとして,可動性を関節の主要なる機能の一つとしている関係上罹患関節の治癒目標を如何様に理解するかというその態度を決めて置く事ではないかと考える. 機能外科を目標としている整形外科学の立場よりしては,罹患関節に関節機能としての可動性を回復しての治癒こそ望ましい事は勿論である. 又その様に努力しなくてはならない. しかしそれには自から限界がある. 然らば現今のわれわれにそういつた事がどの程度に可能であろうか,あの長年月にわたり,しばしは生涯の大部分にも及ぶ関節結核にて,こういつた比判の材料として適切な統計が極めて乏しい. 本当に吟味檢討した統計と考えられている. M. Lange u. Becker(1932)の主として小兒に就ての股関節,膝関節の遠隔成績は表1の如くであつて,レ線像上略々変化なしと考えられるもの8〜10%を除いて相当度の関節破壞を残している. Smith & Walters(1928)の股関節の成績を見ても有効可動性をもつて治癒といい得るものは150例中2例(1.3%)に過ぎない.関節結核と診断された股関節結核208例中46例(22%)又膝関節結核77例中10例(13%)が非結核性の関節疾患であつた事は診断の困難さを物語ると共に関節結核の治癒に関する統計の観察が如何に深重でなければならねかを示しているかを知る事が出來る(表1).表1の示す如くに下肢関節結核の治療成績は惡い.しかも再発に対する最良の防壁と考えられている骨性強直はLa-nge u. Beckerによると股関節にて15%膝関節にて10%Hibbs & Lackum(1925)によると膝関節6例中3例(4.5%)しこ過ぎない.
その他の大部分は高い再発の危瞼率をもつた疲痕組織によつて包まれているか,結核病集の活動が静止するに至つていないかである.臨床上関節結核の診断を確定し得た場合ではこういつた機能外科の立場より悲観的の結果であるので,結核に於ける化学療法の発見完結が殊に望ましい.現今ではそれ故,その病状を正しく判定し,そのために長い期間の観察も行つて,症例に應じた治療法を撰択する事が必要だと云う結論に達する.関節の可動性という事にのみ徒にとらわれる可きでない事は前述の如く完全な関節可動性をもつての治癒という機能外科の究極目的を守る事に困難な事が多いからである.しかしわれわれの肢体を構成する関節を個体全体として見る時には機能上関節の蓮鎖体を形成している.だから一関節の可動性の亡欠によつて必すしも佃休の機能喪失を意味するものではなく,代償作刀1が和当度に出現して來る.それも一関節機能の脱失が若年期に早く起る程,叉長期問を経過する程近接関師による機能の代償度が高い。殊にその場合に於ける関節の肢位の撰択によつては翻当高度の機能が途行し得られる.この良性(機能的)肢位は職業によつても,生活様式によつても多少補足が必要ではあるが,一般には表2の如き肢位である.即ち関節結核の大部分では関節結核病集の迅速なる静止,次いでその再燃の最良の防壁たる関節の骨性強直の発生を促進ししかも完了させる様な治療法を撰択する事が必要であると考えられる.
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