書評
八尾恒良(監修)「胃と腸」編集委員会(編)[Ⅰ 上部消化管]芳野純治,小山恒男,岩下明德(編集委員)[Ⅱ 下部消化管]小林広幸,松田圭二,岩下明德(編集委員)―胃と腸アトラス 第2版―Ⅰ 上部消化管・Ⅱ 下部消化管
田尻 久雄
1,2
1日本消化器内視鏡学会
2慈大・消化器・肝臓内科
pp.1285
発行日 2014年10月20日
Published Date 2014/10/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407105232
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このたび,名著『胃と腸アトラス』が13年ぶりに全面改訂され,刊行となった.本書は,執筆者らが日常診療で遭遇するすべての症例を極めて丁寧に扱い,その経験の積み重ねにより成り立っていることが伝わってくる大著である.本書の最大の特徴はX線像や内視鏡像を中心にした臨床画像所見と病理学所見との対比に基づき,疾患解説が統合的になされていることである.取り上げられている疾患は,消化器診療に従事する上でその理解が必須とされる疾患から,発生頻度は少ないものの貴重な疾患まで多岐にわたるにもかかわらず,非常に質の高い画像で構成され,読者に理解しやすく解説されている.
また第2版では,初版では取り上げられていなかった咽頭の項が追加され,食道・胃・十二指腸・小腸・大腸のいずれの項においても扱われている疾患数は大幅に増えており,消化管で見られる疾患が各臓器別にほぼ網羅されている.さらに画像強調内視鏡や小腸内視鏡,カプセル内視鏡などの新たなモダリティも組み込まれている.第2版の画像は初版に比べてその質が飛躍的に向上しており,その一端を担った画像診断機器の進歩に心をはせながら,美しい画像に息をのみ,厳選された疾患をX線像や内視鏡像などを基に読み進むと時間が過ぎるのを忘れるほどである.何よりもX線像や内視鏡像が鮮明かつ十分に大きく,また随所に執筆された先生の渾身のエネルギーと溢れんばかりの情熱がほとばしっており,ページをめくる度に読む者の心を惹きつけてやまない.本書は13年前に出版された初版がさらに洗練され,その間の消化器病学と消化器内視鏡学の進境が反映された書といえるであろう.
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