書評
―内富庸介,大西秀樹,藤澤大介(監訳)―がん患者心理療法ハンドブック
鈴木 伸一
1
1早稲田大人間科学学術院
pp.83
発行日 2014年1月20日
Published Date 2014/1/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407104924
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平成24年にがん対策推進基本計画が刷新され,がん患者の精神的苦痛に対する心のケアを含めた全人的な緩和ケアのさらなる充実に向けた取り組みが始まっている.がん対策基本法の制定以降,がん診療を行う各地域の主要な医療機関に緩和ケアチームなどが置かれ,がん患者の疼痛管理やせん妄およびうつ症状などへの対応が積極的に行われるようになり,がん患者の心のケアの基盤は整いつつある.しかし,がん患者が医療者に望んでいる心のケアの範囲と内容は,もっと多岐にわたっていると思われる.がん診療を行う医療者も,患者が「がん」という病を抱えながら生きていくがゆえに抱えるさまざまな生活上の不安や葛藤をいかに理解し,ケアしていくかが今後のがん診療の中核的な課題であることは理解しつつも,「誰が」「どこで」「どのように」ケアしていくかという点においては,スタッフの専門性や方法論,さらには状況的な制約などから,具体的な取り組みを実行できないジレンマを感じているのではないだろうか.
このたび刊行された『がん患者心理療法ハンドブック』は,がん患者の心のケアの充実に向けた新たな取り組みへの「道しるべ」になるような,大変優れた解説書である.国際サイコオンコロジー学会(IPOS)公認テキストブックにも指定されており,その内容はがん患者への心理療法の全体像を理解しつつ,かつ各論の重要ポイントをしっかり学ぶことができる構成となっている.
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