Japanese
English
総説
中枢神経系におけるTaurineの作用
The actions of taurine in the central nervous system
出水 干二
1
Kanji Izumi
1
1筑波大学臨床医学系神経内科
1Department of Neurology,Institute of Clinical Medicine,University of Tsukuba
pp.349-362
発行日 1980年4月1日
Published Date 1980/4/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1406204565
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はじめに
Taurine (2—aminoethanesulphonic acid)は,抑制性神経伝達物質として知られるγ—アミノ酪酸(GABA)に類似した構造をもつ含硫アミノ酸の一種である。このアミノ酸は脳,心臓,肝臓および骨格筋などに多く含まれているが65),各臓器における生理的役割,とくに中枢神経作用についてはほとんど解明されていなかつた。しかしながら,生理学的にtaurineが単一ニューロンの興奮性を抑制すること23),実験痙攣を抑制すること138),刺激による組織からの放出が認められること29)などの知見が得られるにいたり,taurineの中枢における生理・薬理作用が注目されるようになつた。現在のところtaurineの中枢作用が十分に検索されているとはいえないが,大きく分けて,この含硫アミノ酸が中枢紳経系の神経伝達物質の一つであるという考え方と神経伝達物質ではないが神経活動を変化させるmodulatorであるという考え方の二つがある8,52,56)。本稿ではtaurineの中枢神経作用に関する研究の現況を述べるが,はじめに一般的な神経伝達物質としてのいくつかの条件を述べておきたい。神経伝達物質としての条件はその物質が,(1)ニューロン,とくに神経終末で合成され,そこに存在していること,(2)刺激に応じて神経終末から放出されること,(3)シナプス近傍に局所投与されたとき伝達が起こり,シナプス後ニューロンのイオン透過性を変えること,(4)伝達後,速やかに不活性化されること,(5)作用に関して特翼的拮抗物質を有することなどであると従来考えられている。以上の条件を念頭に入れ,綜説を試みたこいと思う。
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