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〔88〕頭部外傷の治療,特に30℃以下低体温法の検討
地方病院における頭部外傷,特に重症頭部外傷の超低体温法施行例について述べた。われわれの経験は,最近3カ年の頭部外傷による入院180例のうち非手術例161(うち死亡1),手術例19(うち死亡4)再開頭を含めて手術施行は22例であつた。非手術例は主として薬物冬眠を行ない,重症例は表面冷却法による低体温および超低体温法を施した。薬物冬眠を行なつた期間は症状の軽重によつて違つているが,24時間内,3日内,5日内,7日内,の各群である。5日内のもので1例死んだが,それは薬物冬眠および低体温法により約6時間26℃に保ち,5日間の軽い低体温を続けて麻酔中止以後症状の好転をみた。しかし第10病日に肺水腫を合併して第17病日死亡。
きわめて重症の場合は28℃以下の表面冷却による超低体温法を加えた。ほとんどが頭蓋底骨折を含む高度の脳損傷を伴うもので,死亡例はこの脳損傷の強いものほど予後が悪く,死亡するものと考えられる。この各例のうち第14例は26℃の超低体温法,プレドニン,脱水療法等を加えて脳浮腫が消失したこと,第15例は巨大な硬膜下血腫および大量出血によるにもかかわらず26℃低体温プレドニン併用により一時症状は好転したが第14病日心衰弱により死亡した。また第18例は髄液のほとんど全部が血液で充満され頭蓋底骨折を含む高度の脳損傷を伴い,典型的な脳圧迫症状を呈した。開頭後,洞止血,硬膜下血腫80ccを吸引止血,さらに硬膜外血腫の処置を低体温26℃,プレドニン大量投与下に施した結果,術後意外に経過良好で症状の好転がみられた。しかし第8病日急変,心衰弱のため死亡。各死亡例とも意識の再現,一般状態の好転等が認められ,他の生存例を総合して,超低体温26℃下開頭手術および大量副腎皮質ホルモンの投与等の併用は,試みられてよい一治療法ではないかと考えている。
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