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はじめに
近年,外科手術,とりわけ脳神経外科手術における基本的コンセプトにminimally invasive surgeryが導入され,術後のquality of life の維持,改善が重要視されている。この動向は本来の医療の原点でもあり,この流れに後退はないものと思われる。その担い手の中心の1つが神経内視鏡である。神経内視鏡自体その対象疾患は基本的に管腔臓器であり,本来実質臓器と考えられる脳は対象に成りにくかった。しかし,脳室が拡大した水頭症病態は脳が管腔臓器化したことを意味し,神経内視鏡手術の発展はこの水頭症治療を中心に行われてきた。今回の命題である脳室内腫瘍も高頻度に閉塞性水頭症を合併しており3, 24, 35, 36),経脳室的穿頭にて低侵襲に腫瘍へのアクセスができ,神経内視鏡手術の良い適応疾患と考えられるようになった。また最近では,より細径(外径4~2.5mm)の神経内視鏡(working channelを有する軟性鏡)の開発により,脳室拡大がない脳室内腫瘍にもアクセスが可能となった。
脳室内腫瘍は脳室内原発腫瘍と傍脳室腫瘍(脳実質内に発生し2次的に脳室内に進展したもの)に大別される。これらの腫瘍の治療はその解剖学的深部局所性,大きさ,多彩な組織像,閉塞性水頭症合併などにより個々の症例において様々なアプローチが試みられている。脳室内原発腫瘍の代表例は髄膜腫であるが,これらに関しては定型的な開頭,経脳室的全摘術が治療法として確立されている34)。しかし,脳腫瘍全国集計調査報告(表1,2 26))によれば後者の傍脳室腫瘍の頻度が極めて高く,本部位における主体を成すと言っても過言ではない。これらの傍脳室腫瘍に対する治療は一定の見解を見ていないのが現状である。特に傍脳室腫瘍でも,基底核部に主座を有する症例にはCT誘導下に定位的生検などが行われ,補助療法に委ねられてきた2)。また近年は様々な手術アプローチの工夫により全摘出術も試みられつつある。しかしその摘出率,合併症については未だ多くの問題が存在する。一方,光学機器の開発に伴い脳神経外科領域においても細経で,解像度の高い神経内視鏡が導入され,低侵襲性の観点から様々な疾患,病態に臨床応用されてきた4, 12, 15, 17, 18, 20, 21, 23, 24, 29, 37)。本稿においては神経内視鏡の本疾患における役割について解説する。
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