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はじめに
水頭症とは脳脊髄液(以下,髄液)の産生,循環,吸収が障害され,髄液が脳室またはくも膜下腔に過剰に貯留した状態と定義されている。その病態を生み出すのは髄液の産生過剰,髄液循環路の閉塞,髄液の吸収障害である。また,脳室とくも膜の間の交通があるかないかで交通性と非交通性に大別される。閉塞原因が不明なものを一次性,また腫瘍9, 17),血腫,外傷,感染などの原因が明らかなものを二次性と分類する。
これまでは水頭症の原因・病態の違いなどは考慮されずシャント手術が汎用されてきており,いまでもシャント手術が主流である。しかし,シャントは生体にとって異物の留置であるためにシャント機能不全と感染症は不可避であり,世界的に脳神経外科の先達が苦労されてこられたという歴史がある。一方で,生体に異物を留置しないで水頭症を治療する試みも内視鏡が開発された当初よりチャレンジされてきた。神経内視鏡(以下,内視鏡)手術は外科一般に内視鏡手術が普及するにともない,内視鏡の性能アップ,処置具の目覚しい進歩があり16),ここ20年,低侵襲,安全,有効性において著しく向上してきた。
外科領域での内視鏡手術はほとんどが空気やガスで作業スペースを確保しているが,泌尿器科領域と脳神経外科領域では尿と髄液という水の中で手術を行う特徴がある。そのため,内視鏡も処置具もそれなりの工夫がなされている。髄液の中で内視鏡を使用する利点は,無色透明なため細い内視鏡でも鮮明な画像が得られ,熱を発生する処置具も術野でクーリングが行えることである。欠点としては,出血させると視界がじゃまされ,髄液循環路全体に血液をばら撒く危険性を秘めている。水頭症は髄液の貯留部位で十分なスペースが得られることから,内視鏡手術が最も得意とする疾病である。本法が目指すのは髄液循環路を再構築することにあるので,閉塞が生じやすい生理的狭窄部位であるモンロー孔,中脳水道,ルシュカ孔・マジャンディ孔の順に述べる。また,髄液産生過剰に対しても治療可能であるので最後に触れることとする12~14)。
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