巻頭言
論文発表の傾向からみる我が国の精神医学研究—MEDLINEを利用した30年間の文献検索による
武田 雅俊
1
1大阪大学医学部精神医学
pp.344-345
発行日 1999年4月15日
Published Date 1999/4/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405904743
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精神医学は,「脳と心の研究」にどのように取り組むべきであろうか。文献検索による論文発表の傾向を紹介し,研究の進め方について述べてみたい。データベースとしてMEDLINEを利用して,1968年から1997年の30年間について検索した。各年度のpsychiatryおよびneurologyでヒットする論文数を図に示す。精神領域の論文は1986年までは年間約1,000編で一定数であり,神経でヒットする論文数はそれを下回っていた。psychiatryあるいはneurologyでヒットする論文数は1987年に急激に増加した。精神医学の論文は963から2,185へ,神経学の論文は868から2,090に増加し,その後は精神も神経も順調に論文数が伸びており,現在は,これらの領域に関する論文は,年間精神が6,209編,神経が6,065編であり,ほぼ同数である。世界の精神医学の論文数は順調に増加しており,精神と神経とが歩調を合わせて進行していることがわかる。ところが,日本国内に限ってみると精神が266編,神経が532編であり,精神医学の論文数は神経学と比較してその半分である。これは,我が国の特徴であり,精神医学領域の研究論文が必ずしも欧文で発表されていないことを示す。しかしながら,MEDLINEには,日本精神神経学雑誌,神経精神薬理,脳と神経,老年医学雑誌などの英文抄録のある雑誌は収載されていることを考えると,やはり精神医学領域の論文数は少ない。我が国の精神医学領域において,国際的な研究成果を輩出することが強く望まれる。
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