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1996年7月24日から29日の間,大阪ロイヤルホテルにおいて,西村健・前大阪大学教授の会長で,第5回の「アルツハイマー病とその関連疾患に関する国際会議(Fifth International Conference on Alzheimer's Disease and Related Disorders)」が開催された。この学会は10年前に設立されたもので,今日まで,2年に1回開催されている。ラスベガス,トロント,パドバ(イタリア),ミネアポリスなどに続いて,このたび,大阪において第5回学会が開催された。
アルツハイマー病に関心が集まるに従って,着実に発展している学会である。今回の出席者は約1,600名であった。発表された演題は約800題,それらは,分子遺伝学,分子生物学,動物モデルといった基礎的なものから,臨床経過と診断,疫学と危険因子,治療,心理社会的ケアといった臨床的研究,さらには,神経変性疾患や,脳血管性痴呆などについての研究など,広い領域にわたったものであった。それぞれの領域にいくつかの目立った動きがあった。分子遺伝学に関しては,近年,めざましい成果の報告がなされており,家族性アルツハイマー病の遺伝子はいくつかの染色体に連鎖し,単一でないことは周知の事実となっている。1995年にSchellenbergらによって明らかにされた,家族性アルツハイマー病の遺伝子に関連する蛋白presenilin Ⅰ,presenilin Ⅱについての研究が,この1年あまりの間に,世界中で,驚くほどの速さで行われていることを知ることができた。また,分子生物学領域では,これまでどおり,アミロイドやタウの生成機序の問題が取り上げられ,細胞内小器官との関係などにおいて新しい成果が報告された。その一方で,他の神経変性疾患ですでに注目されている酸化ストレスの関与についての報告がいくつかなされたのは,新しい方向を示すものと思われた。
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