巻頭言
世界の子どもは,今
山崎 晃資
1
1東海大学医学部精神科
pp.572-573
発行日 1996年6月15日
Published Date 1996/6/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405904110
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近年,我が国では,合計特殊出生率が1.5を下回り,子どもの数が減少し続けている。ある推計では,この状態が700年続くと日本の人口は消滅するといわれている。それにもかかわらず,不登校・いじめ・自殺・児童虐待などの子どもの心の問題が急増し,多様化し,しかも低年齢化する傾向にある。毎日のように報道される「いじめ」による子どもの自殺は,私たちの心を暗くし,どうしようもない虚しさを感じさせる。現代に生きる子どもたちには,夢とか希望はないのであろうか。もしそうであるならば,子どもたちから夢や希望を奪い去ったのは誰なのだろうか。
世界に目を転ずると,急増する人口問題,難民,児童虐待,ホームレス,ストリート・チルドレンなど,日本の現状からは想像もできない問題が山積している。暴力,虐殺,飢え,家族との離別などに苦しむ世界の子どもたちを見ていると,日本の子どもたちをめぐる問題が,ある意味で,極めて奇妙な現象のように思えてくる。平和と繁栄を謳歌する日本の子どもたちの実にささやかな問題とも思えるし,一方,目の前で親を殺害されるルワンダや国家の基盤を失ったボスニア・ヘルツェゴビナよりも,本当はもっと根の深い問題を抱えているのかもしれないとも思える。
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