Japanese
English
研究と報告
憑依現象を呈したFolie à troisの2例
Two Cases of Folie à Trois Presenting the Possession Syndrome
三田 俊夫
1
,
酒井 明夫
1
,
上田 均
1
,
藤村 剛男
1
,
中村 正彦
1
,
伊藤 欣司
1
,
坂本 文明
1
Toshio MITA
1
,
Akio SAKAI
1
,
Hitoshi UEDA
1
,
Takao FUJIMURA
1
,
Masahiko NAKAMURA
1
,
Kinji ITO
1
,
Fumiaki SAKAMOTO
1
1岩手医科大学神経精神科
1Department of Neuropsychiatry, Iwate Medical University
キーワード:
Folie à trois
,
Lycanthropy
,
Schizophrenia
,
Folk belief
,
Superstition
Keyword:
Folie à trois
,
Lycanthropy
,
Schizophrenia
,
Folk belief
,
Superstition
pp.983-989
発行日 1993年9月15日
Published Date 1993/9/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405903518
- 有料閲覧
- Abstract 文献概要
- 1ページ目 Look Inside
【抄録】 憑依症状群(キツネ憑き)を中心とするfolie à troisの2例を報告した。発端者はいずれも精神分裂病であり,「家」のうちでは中心的役割を果たし,共同体の文化的脈絡にそって生活していくべき立場にあった。1例は山村,他例は漁村が舞台となっているが,いずれにおいても発端者と継発者とは,地域の民間信仰と俗信を絆として互いの緊密な結びつきを保ち,それを土台に互いの病像を支持し合い,強め合うという傾向が顕著に認められた。従来,本病態の発生には,外部とは隔絶された,長期にわたる同居の期間が必要とされてきたが,本例では,地域と家庭双方における民間信仰の共有が,いわば心性という次元で同居と同様の状況を作り出していると考えられる。これらのことより,本病態の発生因として,従来重要視されてきた遺伝的近接と環境的近接に加えて,地域の伝統風俗や習慣に土台を持つ,信仰,思想上の近接が重要な役割を果たしうることが示唆された。
Copyright © 1993, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.