Japanese
English
特集 精神科領域におけるインフォームド・コンセント
同意能力と治療拒否権
Competence to Consent and Right to Refuse Treatment
高柳 功
1
Isao Takayanagi
1
1有沢橋病院
1Arisawabashi Psychiatric Hospital
キーワード:
Informed consent
,
Competence
,
Right to refuse treatment
,
Proxy consent
,
Outpatient commitment
Keyword:
Informed consent
,
Competence
,
Right to refuse treatment
,
Proxy consent
,
Outpatient commitment
pp.1317-1323
発行日 1992年12月15日
Published Date 1992/12/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405903360
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■はじめに
医療は医師,あるいは医療スタッフと患者の良い人間関係の上にのみ成立する,とよくいわれる。このことは,とりわけ医師と患者の良い人間関係が,医療の結果に大きく影響することを示しており,実際,臨床的にも良い人間関係がないところに,良い治療効果は生まれないことは広く経験される事実である。これは精神科医療でも例外ではなく,医師と患者の信頼関係が,精神科医療の基本となる。
幻覚や妄想のために疎外されたり,陰性症状のために,社会的に引きこもったりする患者が,治療者にだけは心を開き,回復のきっかけをつかむことは,臨床的にもよく経験することである。
医師と患者の信頼関係を作り,発展させるためには,病状や治療方針,今後の見通しについて,医師が十分説明し,患者が理解,納得して同意するという治療過程がなによりも大切である。これは病覚がなく,現実検討が不十分な患者であっても求められるところである。
しかし,精神科医療では,しばしば病状のため意思疎通が困難であったり,被害感情ゆえに過度に防衛的であったり,しばしば人間関係を保つことが困難となり,治療も難しくなることがある。治療拒否対医療の確保という,一見矛盾した命題に対処しなければならないことも稀ではない。このように考えると,精神科領域は,インフォームド・コンセントに関して最も困難な分野の一つであろう。
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