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■はじめに
今世紀に入り,Bleuler E,Kraepelin Eらが精神疾患の遺伝性に注目して以来,Rüdin Eの精神分裂病の2独立遺伝子座位仮説をはじめKallmann FJの研究など,多くの研究者により精神疾患の成因についての研究が集積されている16,39)。それにもかかわらず精神疾患の統一された成因論は確立されていない。このことは,単純な成因論で考えること自体が不可能であることを意味しているのかもしれない。近年の成因論議は素因か環境かとあたかも相対立する二分論的論議が多い。そして,臨床観察的研究からも種々の表現型から臨床疾病単位を細分化し,概念が先走りしている感も否めない。これら確立されない成因論に要請されることは,生物学的成因論と環境因的成因論の統合された論議であるように思われる。
最近遺伝研究で,単純なメンデル遺伝形式では考えられないことから,染色体の遺伝子連鎖分析が盛んに行われ,Bassettらが遺伝子連鎖分析研究の臨床的・方法論的問題点を紹介しながらその寄与を強調している3,4)。しかし,遺伝子型が変化しなくても,出生前ないし出生後の環境要因により表現型が変化する16)という意味で,これらの成果も種々の表現型のうちの1つの可能性であり確立されたとは言い難いものであるが,環境的な要因も考慮しなければならぬ問題である。
以上の事情から,Gregory17)が精神障害者の家族の分析から有意な結論が出なかったとしているが,臨床実践的な諸問題を掘り起こし整理してゆく必要があり,その一環として,我々は精神障害者の両親が高齢であるという印象から,両親の年齢および同胞についての情報とさらにこれらに付随する諸問題を整理してまとめた。
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